人気ブログランキング | 話題のタグを見る

住まいとデザインのはなし 2002-2016

068 リビング階段

068 リビング階段_e0025025_9125691.jpgこれは「桜町の家」の居間の写真ですが、正面の漆喰塗の壁(クリーム色の部分)の裏には階段が隠れています。その横には白く塗られた扉が見えますが、これは階段下を利用して設けた、AV設備のための収納扉です。また、ここは階段の踊り場にあたり、階段を折り返すと2階のワークスペースへとつながっています。

「リビング階段」という言葉の定義は非常に曖昧で、一般的には「リビングの中に設けられた階段」を差しているようです。私たちは打ち合わせの中で積極的に「リビング階段」という言葉を使いません。どうもこの日本的な造語が馴染めないのと、結果的にリビングの中に階段を設けることはあっても、積極的に設けることがないからでしょう。よく「リビング階段を設けたので家族のふれあいが感じられます・・・」というような表現を目にしますが、これもおかしな話で階段とは上下階の空間をつなぐためにある設備のひとつですから、実際には吹抜などの空間が上下階を一体化するという表現が正しいのです。

さて「桜町の家」では結果的に居間の中に階段を設けていますが(それでも目に付かないように壁で隠しています)、階段を上がった先には下階と連続するもう一つの空間「ワークスペース」が用意されています。ここは書斎代わりに使ったり、子供が勉強したり、特に用途を特定してはいませんが、居間の機能とは異なるが、空間を共有したいような機能を配しています。吹抜越しにつながる2階の空間にも長時間留まれる場所がある訳ですから、(一時的な通過動線である)階段のみで終わってしまう場合と比べると、家族の交流は密になることでしょう。

話を元に戻すと、個人的には階段は空間の主役として設けるべきでないと思っています。しかしなんらかの条件によって空間の目立つ部分に設けないといけない場合は、写真のように漆喰塗の壁で隠したりして「主役」をすりかえる作業を行なうことにしています。新しく主役になった壁は、TVや飾りだなを設けたり、絵を飾ったり、その住まいの主人の趣味を表すような顔になり、居間の主役として相応しい姿で空間に溶け込むことでしょう。(A)
by miz-arch | 2005-11-03 09:54 | 住まいのはなし