住まいとデザインのはなし 2002-2016

カテゴリ:設計のはなし( 26 )

136 暖房器具の選び方


e0025025_09012961.jpg神戸の地震から、ちょうど22年経ちました。
当時は大阪に住んでいて自分のアパートこそ被害はありませんでしたが、
この日を境に生活がガラッと変わりました。
被災して出社出来ない同僚を気遣ったり、仕事で直接復興に関わったり。
とにかく時間の流れが速く慌しく経過していきました。
その割には1日1日が遅く感じる不思議な感覚を伴いながら。

そのときの経験をもとに自分の家はライフラインの確保を最優先とし
プロパンガスに薪ストーブの生活とすることが決まりました。
現在は省エネ一辺倒の世の中ですから「良い暖房は何ですか?」
と聞かれると「エネルギー効率の良いエアコンでしょうか。」
と答えていますが、実はこの「でしょうか。」の影に
「世の中には推奨されていないけど、災害地に備えて
石油ストーブも備えて下さい。」という言葉が隠れています。
それでも、あと数年もすると、自然エネルギーを変換して
暖をとるようなシステムが生まれ、石油ストーブは
不要になるかもしれませんし、そうあるべきだと思っています。

その時々のトレンドや技術によって推奨すべき暖房方式は変わります。
その中でベストチョイスを見つけていくのですが、
これだけは未だに一番の悩みどころです。。。本当に難しい。
最終的には住まい手さんのご要望や相性などで判断しているので、
この断熱方法ならこの暖房といった同じような組み合わせがありません。
これも住まの個性が現れてくる場所なのかもしれませんね(A)




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by miz-arch | 2017-01-17 22:30 | 設計のはなし

130 一年点検

e0025025_9323816.jpgこの週末、昨年竣工した2軒のお宅の一年点検に伺いました。
どちらのお宅もきれいにお住まいで、思わず嬉しくなるほどでした。

私たちは設計した住まいが竣工してから一年後に「一年点検」を行い、
住まいの様子や住まい方を見せて頂くようにしています。
皆さん、住まいの引き渡し時に気付かなかったことや、
住んでから気付くことなど何かしらの気になることが出てきます。
他にも建具の調整や床ワックスや外部塗装の状況など、
経年変化をみながら気がかりなことを確認して行きます。
その他にも棚が追加で欲しいとか、フックをつけたいがどこが良いか
などの相談を受けることもしばしばです。
この日も、一方の住まいではハンガーパイプの高さ変更や、
壁を飾るためのフックの位置の相談を受けましたし、
もう一方の住まいでは、外部舗装の相談や風の強い日の
ロールスクリーンの固定方法などの相談を受けました。


当初の予定通りに住まわれている方、想定外の使い方をされている方など、皆さま良い意味で期待を裏切って頂いています。
それくらい住んでみなければ分からない事が多いということでしょう。
この写真の住まいもトップライトの下にハンモックを吊るされ、隣にある本棚から読みたい物を手に取る。。。
とても快適な時間が過ごせそうですが、これも住まわれてからの計画。
皆さん、思い思いに好きな場所を見つけ過ごされているようです。

住まい手の皆さまには、住まいをより快適にするための目的で行われる一年点検ですが、
私たちにとっては、新たな空間の使い方事例に出会える貴重な時間でもあります。
加えて、自分たちが設計した住まいに快適に過ごされている様子を伺えるのが一番嬉しいのはいうまでもなく。(A)
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by miz-arch | 2013-10-28 10:00 | 設計のはなし

082 屋根の雪

例年にない降雪のため、私たちの住まいの屋根にも沢山の雪が積もっています。ニュースでは4m近く積もった地域や雪下ろしをしている様子の映像をよく見かけるようになってきました。


e0025025_13522768.jpg写真の「黒い家」の屋根は瓦(一部太陽電池パネル)ですが、ある程度積もると自然に落下するので雪おろしまでは必要ありません。ただし、この落下が問題で、写真に見られるように軒下へ巻き込む形で落ちてきます。この際に、軒裏や壁面を傷めるので、私たちは雪の切れやすいディテールを用いたり、壁面保護の為に壁面をガルバリウム鋼板で仕上げるように設計しています。


e0025025_13524653.jpg屋根から雪を下ろすようなことを考えると、落ちた雪の処理や前述の問題、さらには落雪によって屋根の下にあるもの(人・車・植栽など)に与える影響が大きいので、写真のような雪止めを設置します。L型のアングル(型鋼)を用いたシンプルなものですが、既製品を用いるより確実に止めてくれます。
それでは落雪はどうして起きるのでしょう。


e0025025_13525914.jpgこれは「白い家」の屋根を写したものですが、下の部分は氷状になっているのが分かると思います。積雪が長期化してくると、最初に積もった雪は住まいの中の熱を受け融けたり、雨水を吸い込んで氷のようになっていきます。そしてある程度の重量を持つと屋根面と雪の間にできた水の幕が滑りやすさを増幅し、落雪へと導くのです。

ちなみに「白い家」では最初の一年間は落雪の様子を伺うために雪止めは設置していませんでした。その際は屋根の下に1m以上の雪山ができていましたが、設置後の落雪は殆ど見られず、今年もまだ積もったままです。勿論、150kg/㎡×1.5mの積雪荷重(地域によって異なり、建築基準法による)に耐えうるようにつくられていることが前提条件です。ただでさえ周辺の除雪で疲れているのに、屋根の雪の分までとなると大変ですね。(A)
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by miz-arch | 2012-02-27 14:55 | 設計のはなし

127 住まいの値段

e0025025_11144810.jpg
新しく住まいづくりをスタートするにあたり、ほとんどの住まい手は総予算をいくらにするのか決めることから始めます。土地探しから始める方は、土地の値段を含めて考えますし、新居に合わせて家具や電化製品を新調しようとする方は、それらの費用も住まいづくりの予算に組み込んでいくのが普通のようです。その結果、最初に想定した総予算から土地や家具などの金額を差し引いた残りが建物の予算となる訳ですが、そこで設計事務所に住まいの設計を依頼すると、設計費用が余分にかかるので・・・、という風に考えてしまいがちです。実際にはハウスメーカーさんでも設計料はかかりますし、こんなネガティブな発想では気持ちの良い住まいは生まれるはずがありません。一般の方が自分の考えている住まいにどのくらいの予算が必要か正確に分からないでしょうし、低く見積もってしまった場合には建物に十分な予算を割けないため、あとあと不満を残すことになってしまいます。

私たちは設計依頼を受けるにあたり、住まいづくりの総予算をお聞きします。土地探しから始める方には、土地代を含めた予算をお聞きします。その上で、購入を検討されている土地が「住まいづくり」の中で過分でないかを判断します。購入が決まれば、残りの予算の中で設計料を含めて何が出来るかを考えます。住まい手の趣味や希望、将来の暮らし方を一生懸命考えます。一人一人違う個性を育むにはどのような器が良いのか、家族としてどのような空間が好ましいかを住まい手と相談しながら決めて行きます。住まい手との打合せや住空間の検討にかなりの時間を要します。ですから一人で受け持つできる件数には限りがあります。私たちの場合は年間2~3件になってしまいます。現在はスタッフ含めて3名ですから、多くても年間あたり7~8件が限界です。この人件費に支払うのが設計料となるのですが、これを高いと考えるか安いと考えるかは皆さんにお任せします。人それぞれ、考え方が違いますから。

さてAnT cafe 3rd「0.1億円台のすまい」展では、2つの住まいを紹介させて頂きました。1つ目は写真にある「ウッドデッキの家」、もう1つは「木工職人の家」です。この2つの住まいを通じて、私なりの住まいづくりの考え方、費用の割り振り方などを見て頂きました。この住まいに共通しているのが、住まい手が快適に過ごせるためのオンリーワンな空間であることです。そして、その土地の持つ能力を最大限に生かした空間が展開されていることです。私たちのつくる住まいは「量産品」ではありません。ましてや我々の利益を追求するためのものや芸術的な作品ではありません。住まい手のニーズを隅々まで拾い上げ、積み上がったものが「かたち」となった「住むための空間」です。この空間が他の住まいとどう違うのか。こればかりは文章や写真だけでは表現しきれない分が多々ありますので、オープンハウス等の機会に足を運んで感じて頂ければと思います。きっと住まいごとの相違点が見つかるはずです。(A)
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by miz-arch | 2011-08-05 12:00 | 設計のはなし

126 地球にやさしい住まい

e0025025_14211831.jpg先週末のこと。一昨年から受講している連続環境講座の実践編として、東京方面へ「環境建築」を見学するツアに参加してきました。「カンキョウケンチク」と言うと少し難しい感じがしますので、地球にやさしい建物を見学してきたと言った方が分かりやすいかもしれませんね。
今回のツアーで訪れたのは、学校や庁舎などの大きなものから、実験住宅やモデル住宅などの小さなものまで多岐にわたりました。規模や予算の違いあれど、限りあるエネルギーを有効に使おうという思想がそれぞれに込められていました。

さて写真の建物ですが、これはその際に訪れた中村勉さんが設計された「大東文化大学」の板橋キャンパスです。ご覧の通りとてもモダンな校舎ですが、この建物には「超寿命」「自然共生」「省エネルギー」「自然エネルギーの積極的利用」などの27項目に及ぶ工夫が込められていました。その中で最も感銘をうけたことは、この校舎に用いられたハイテクな設備ではなく、「少ないエネルギーを有効に活用するために、暖房範囲を限定したこと」でした。写真からも伺えますが暖房範囲は個室のみとし、階段や廊下などの共用空間は半屋外としてあります。こういった不特定目的空間が暖房範囲から外され不快なのかというと、決してそんなことはりません。むしろ外を感じることができ、偶発的な行動が起こりうる豊かな空間として位置付けられていました。実際、この時の気温は10度前後と肌寒かったのですが、それでもこの半屋外の空間にしばらく見を置きたくなるくらい居心地は良かったです。

e0025025_14484810.jpgこちらの写真は伊礼智さんが設計された相羽建設さんのモデルハウス「i-works」です。25坪あまりの小さな住宅でしたが、小さいことを感じさせない創意工夫と豊かな空間を見ることができました。残念ながら時間の都合で30分ほどしか滞在できなかったのですが、ここで生活すると心地よい時間が過ごせるだろうことは十二分に感じ取ることができました。そして「環境建築」というのはあくまでも建物を造る際の手段のひとつであり、重要なのはそこで過ごす人々の居心地の良さを見過ごさないことだと改めて確認することができました。

これまでもこのブログの中で私たちなりの「地球にやさしい住まいづくり」をいくつか紹介(006008011065104 など)してきましたが、これからも新たな取り組みなどを紹介していくことができればと思います。それは今回のツアーで見たようなハイテクな取り組みではないかもしれませんが、私たちなりの創意と工夫で地球にやさしい住まいづくりを継続していきたいと思います。(A)


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by miz-arch | 2011-02-28 16:00 | 設計のはなし

125 住まいをつくる時間

e0025025_18442712.jpg写真は昨年の10月に「ラウベ小矢部」のオープンハウスで展示した白い家」の模型です。その後、ヤマハリビングテックさんに会場をお借りして開催された「AnT Cafe 2nd」でも展示していましたので、ご覧になられた方があるかもしれませんね。1/50のスケールで作っていますので、内部の棚や家具なども細かく表現されています。余談ですが、設計の世界に足を踏み入れて初めてする作業。その殆どが模型づくりかもしれません。私もそうでした。今思えば学生時代には数えきれないくらいの模型を作りました。そうやって、空間力を高めて行ったのだと思います。

家を建てること。それは住まい手にとっては、一生に一度の大仕事であり、大きな買い物でもあることは間違いありません。そして私たち設計者がいつも肝に銘じ、忘れてはならないこととは、家は買うものではないこと。そして住まい手が準備するお金の大切さです。住まいづくりは宝くじでも当たらない限り、そう何度もできる経験ではありません。だから住まい手とじっくりと時間をかけ、一緒に考えていきたいと思っています。限られた費用の中で、どこにどれだけの費用を費やすか。住まい手の皆さんと一緒に悩み、納得頂けたらようやく次のステップに移ることができるのです。
通常の場合、私たちは設計のお話しを頂いてから住まいが完成するまで、おおよそ1年の期間をかけています。そのうち最初の半年を図面作成に、そして残りの半年を工事と監理に充てています。ではなぜ図面作製に半年も要するのか。その答えは簡単で、住まい手にじっくりと考えて欲しいからです。図面をお見せして2週間はじっくり考えて頂きます。前の日にはいいと思ったことが、次の日にはやっぱりこっちがいい・・・なんてことがありますよね。一時的な想いだけで進むと、あとで後悔することになりかねません。これから何十年と住んでいく器だからこそ、そして大切なお金をかける空間だからこそじっくり考えて頂きたいのです。

設計を依頼されてから図面作製にかかる半年は、住まい手と私たちはとても密な関係になります。私たちは、ずっと提案することを考えていますし、住まい手は(多くの場合が慣れない図面の読解に苦労しながら)提案された空間が良いかどうか悩まれています。そういった時のために(理解を早めるため)冒頭にあるような模型を制作し、持ち帰って頂き、じっくり考えてもらいます。時には半年以上が必要になることもあります。それはプラン決定までに何度もかかる場合や、途中から住まい手の考え方そのものが変わる場合もあります。初めてお会いして、すぐに住まい手の想いを聞けるとは限らないのです。やはり最初は緊張されるでしょうし、秘密にしておきたいこともあるかもしれません。打合せを繰り返すごとに、「実は…」ということもあります。要は、しゃべるきっかけも必要なのです。中には即決できる方もいらっしゃいます。でも、その配偶者は悩む方だったりします。意外とこんなところでも夫婦の帳尻があっているのでしょうね。私たちも、一方が悩めばもう一方が即決するなんてことの繰り返しです。まぁ、大体の場合は私の方が悩みこむのですが。ちなみに私たちの自宅は、とても簡単なプランにもかかわらず設計に2年もかかってしまいました。

こういった作業の積み重ねですから、半年(場合によってはそれ以上ですが)という期間は長いようで短く感じられることのほうが多いようです。ある住まい手からは、「友人の家に遊びに行ったような感じで、お二人と楽しく話をしていたら図面が出来ていた。」なんて嬉しい言葉を頂きました。その言葉が示す通り、しんどい中にも楽しい時間を過ごされることになります。その濃密な時間は、いつまでも住まい手の記憶に残ります。子供たちの記憶にも。そして図面が完成してからの半年。こちらは実際に住まいを造る時間です。住まい手は工事過程を楽しく見守って頂く期間になります。それでも外壁の色やカーテンなど備品の仕様など、細々とした打合せが沢山あります。案外こちらはこちらで随分悩まれる方の方がが多いようです。ご夫婦で意見が合わない場合もチラホラ。。。

こんな感じで笑いあり涙ありの1年が過ぎて行きます。雪が降る北陸ならではなのか、12~3月にかけて住まいの相談や設計の依頼を受けることが多いようです。それは、年末を新しい住まいで過ごしたいという想いや、子供たちの学校の都合で春までに入居したいなど理由は様々ですが、案外ギリギリになってから相談に来られる場合が多いようです。冒頭にも書きましたが、一生に一度の大仕事です。これから住まいづくりを考えておられる方は、じっくり考えるためにも余裕を持ってスタートして下さい。(A)
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by miz-arch | 2011-01-19 20:00 | 設計のはなし

122 土地と建物のはなし

e0025025_10101024.jpgこれはお盆休みに訪れたキャンプ場で撮影した写真です。写っているサイトはわが家が利用した場所ではありませんが、池に隣接して良い場所だなと思い、次回は是非ともここにしようと記録のために撮影しました。

写している場所は共用通路(道路)からなので、ご覧のようにサイトの中が丸見えです。でもこちらはオートキャンプ場。自分たちの車を前に駐車すれば、十分な目隠しになってくれます。そして隣接するサイト(区画)との間には自然のままの草木が生い茂り、簡易な塀となっています。おかげでプライバシーが確保され、心地よく日中を過ごすことができそうです。


住まいを設計する際、どのようなかたちの建物を敷地のどこへ建てるのかということは、とても大切な要件の1つです。テントのように簡単に移動できないのですから、慎重に決めなければいけません。太陽光や風などの自然エネルギーをいかに効率よく取り込むことができるか、そして隣地との関係はどうか、(特に隣接した建物がある場合は)お互いの窓の位置関係はどうかという現在の状況、さらには将来にわたって(隣地の建物の)建て替えの計画を考慮する必要があります。これらの計画を慎重にこなすことにより、土地や建物の価値は何倍にもなるのです。

さて写真のテントですが、私だったらどのように建てるでしょう。画面右手が南になるので、おそらくもう少し中央寄りにテントを設営し、周囲の風通しを良くするようにしたかもしれません。そんな思いを巡らせながら、各サイトを眺め早朝の散歩をするのも、私なりのキャンプの楽しみ方の一つなのです。そこには、住まい手が自由気ままに(ある時は私の想像を超えるような発想で)建てた「小さな小さな住まい」が沢山あるので、私にとっての学びの場でもありますから。(A)


<2011/08/29追記>
予定通り、今年はこの場所でキャンプをしてきました。他と比べて少し小さめの土地でしたが、それを活かしてプライバシーを確保した居心地の良い空間が出来ました。朝起きると池で跳びはねるニジマスの音や、木々を通り抜ける風の音が聞こえ、リラックスした時間を過ごすことが出来ました。さて、次回はどんな所に設営しようかな・・・。また楽しみが広がります。
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by miz-arch | 2010-08-23 10:00 | 設計のはなし

117 構造実験

e0025025_15111960.jpgこれは先日、NPO法人WOOD-ACさんと共同で行なった構造試験の様子です。

この試験の目的は床面の耐力(地震などの外力に対して、どの程度の強さがあるか)を確認することですが、ご覧のように過大に歪んだ様子を初めてご覧になられる方は、大丈夫なの・・・?と驚かれることでしょう。


本来であれば、こういった試験を私たちのように小さな事務所が行なうことは稀で、どちらかと言えば学術的な面が大きいので大学などの教育機関などが行なうことが一般的です。けれどもそれでは現場の声が反映されず、非現実的な試験ばかり行なわれたり、机上の空論になることも多いでしょう。そこで私たちが実際の現場状況を反映させたようなかたちで実験を行なうことに意義(現場データのフィードバックと検証)があるのです。

さて本題(今回の実験)に話をもどしましょう。
通常の構造設計においては、写真のような変形を起こすことがないように計算しています。変形量(傾き具合でもいいです)で示すと、写真のおよそ1/10程度で収まるように設計していると説明した方が分かり易いかもしれません。では何故これほど大きく変形させているのかというと、この実験ではそれ以上(想定以上)の力が加わった場合に、どのように破壊されるのかというプロセスも確認しているからです。(つまりは、破壊状況を判断するためにあえて壊していると言った方が尚、分かり易いでしょう。)そして、破壊状況に合わせた補強や構造の考え方を行なうように再び、設計にフィードバックしていくのです。
今回の実験で得られた成果は、床の剛性の考え方(新しい工法)と地震などの際に柱に働く引き抜き力(地震時に家屋が倒壊す要因の一つ)の考え方でした。いずれも今後の設計に際して非常にプラスになる事柄で、これらのデータは直近の設計にす直ちに反映されることでしょう。

今回の実験における唯一の難点は、実験会場まで遠いこと・・・でしょうか(笑)
関係者の皆さま、お疲れ様でした。(A)
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by miz-arch | 2008-03-21 17:07 | 設計のはなし

110 丈夫で長持ちする住まい

大きな台風の通過に安堵する暇もなく中越地方を襲った大きな地震。まずは被災地の皆さまのご心労お察しします。3月の末には能登地方で大きな地震があったばかりだというのに、ただただ自然の猛威に人間の行為の儚さを感じさせられます。
そこで今回は先日の能登沖地震で調査した内容をもとに「丈夫で長持ちする住まい」について少しお話したいと思います。少し長文となりますが、ご容赦を。

e0025025_102372.jpgこれは基礎の写真ですが、ご覧の通り床下換気口の周囲に大きなクラック(ひび割れ)が見られます。ご存知の通り、床下換気口は床下の通気を良くし、土台や柱などの構造材や床材が湿気るのを防ぐためのものですが、写真のように基礎が破壊されては上部構造をいくら頑丈に造っても無意味といえるでしょう。

e0025025_107351.jpgそこで私たちは左写真のような基礎形状(一般的には「ネコ土台」「基礎パッキン」と言われる工法)としています。外周部には換気口を設けてないのが分かると思います。これで強度の低下を防ぎ、丈夫な基礎を造ることができるのです。また内部についてもできるだけ細かく基礎を通し(こちらも途中で分断しません)全体で格子状の基礎を造っています。
「それでは床下の換気は・・・?」となりますが、土台と基礎の間には2cmの隙間があり、こちらで通風を確保(全周が換気口になる)しています。これなら床下の空気が滞留することもありませんし、湿気を心配することもありません。また土台の下端も基礎と接していないので、シロアリや土台を腐らせる腐朽菌を寄せつけにくい環境とすることがでるのです。


e0025025_10325059.jpgさて続いての写真ですが建設途中の現場で見つけた「筋交い金物」の変形状況です。ご覧の通り、プレートは折り紙のように複雑に曲がり、耐力を確保するはずのビスが外れています。これでは期待していた構造耐力を確保することが間々ならないばかりか、復旧作業においても困難をきたすことが容易に想像できます。
ではどうしたら良いのでしょうか。答えは明快でリスクを分散させれば良いのです。筋交い工法では応力(地震等の力)が一点に集中するので、構造用合板などの面材で耐力壁を構成すれば良いのです。そして可能な限り耐力壁を設けることが肝要となってきます。またしっかり造られた構造体を基礎とどのように緊結するかということも大切です。これら全てが揃っていないと丈夫な住まいは造れないのです。他にも床面の剛性をどのように確保するかなど重要なポイントはいくつかありますが、この話はまたの機会に。


e0025025_1033113.jpge0025025_10333265.jpg
さて最後の写真ですが、この2枚は破壊された外壁の中で見つけた断熱材の様子です。ご覧の通り、左の写真では湿気を吸い込んだ重みで垂れ下がり、一部に断熱材が無くなっている様子が見て取れます。また右手の写真では断熱材を梱包している袋に湿気が入り込み、結露した部分の水滴が光っています。この断熱材は一般的に(おそらく一番シェアが高い)使用されているグラスウールですが、工事の作業性を考慮しビニール袋に梱包されています。この梱包が完璧であれば問題は無いのでしょうが、結果はご覧の通り。これでは壁体内に湿気を溜め込み、腐朽筋やシロアリ被害の温床となってしまいます。これらを解消する方法はいくつかありますが、私たちは現在のところ(費用対効果等を考慮し)羊毛断熱材を使用することで一つの解決策としています。またできる限り構造体を見せ、状況を判断できるような住まいづくりが「長持ちする住まい」をつくる秘訣だといえるでしょう。

私たちはこれからも「流行りだから・・・」とか「雰囲気がいいから・・・」や「安価だから・・・」といった安易な選択による木造の住まいを推奨するのではなく、十分な検証と検討のもとで「丈夫で長持ちする住まいづくり」を考え、普及に努めていこうと思っています。現在は個々に対応している住まいづくりの相談(専門家向け)を数年後には寺子屋のようにできればというのが当面の目標となりそうです。(A)
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by miz-arch | 2007-07-18 11:56 | 設計のはなし

108 窓の大きさ

e0025025_19131460.jpgこちらは昨年竣工し、間もなく1年を迎える「上轡田の家」です。
この写真で見える方角は南面で、左手の小さな窓と右手の大きな木製サッシ(上部はアルミ製のはめ殺し窓)が対比的な立面を構成しています。
平屋に見えるかもしれませんが実際は2階建てで、北面に子供室などの個室を配置し、全体のシルエットをシンプルに見せています。

窓のかたちをどうするか考えるときに以前(私たちが関西から転居して間もない頃)、私たちの住まいを見た友人から「何でカーテンウォール(全面ガラス)じゃないの?」と不思議そうに訪ねられたことを思い出します。(ガラスの)カーテンウォールにすれば室内は明るく、外観も今風でカッコいい。そんな思いが込められていたのだと思いますが、私たちの回答はいたって簡単。「開口部を大きくとることのメリットを感じないから。」でした。窓が大きくなったら熱負荷も増え、夏の暑さや冬の寒さに悩まされることは明白です。また構造上必要な耐力壁の確保も難しくなり、また壁面の収納量も減ってしまいます。そして何より窓掃除が大変・・・。

またある住まい手から「全ての窓が普通に窓掃除ができるように。」と依頼されたことも思い出します。私たちの設計する住まいは基本的には窓掃除まで考慮して設計していますが、場合によっては脚立を必要とする場所もあります。それでもそれほど苦労しなくても窓掃除ができるように考えています。ですから、大きな「はめ殺しの窓」の住まいは殆どありません。それでも見栄え優先でと望まれる方には断りを入れた上で、大きな窓をとることもあります。それでも前段のカーテンウォールになることはありませんが。

さて「上轡田の家」ですが、こちらの住まい手は大きな開口を望まれました。結果、大きな木製サッシと上部に小さなはめ殺し窓の構成になった訳ですが、外観上はそれほど窓があるように見えないかと思います。それでも室内は暗くありませんし、必要十分かと思います。ちなみに冒頭左手の小さな窓は寝室なので、こちらもこれで十分でしょう。

窓の大きさやかたちは住まいを印象付けるアイテムであると同時に、室内環境に影響する最大因子でもあります。これらをどうバランスし、きれいに整えるか。。。私たちの腕次第といったところでしょうか。でも本音を言えば「かっこ良く(見栄えを優先)して下さい。」「はい、喜んで!」なのです。(A)
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by miz-arch | 2007-06-05 15:10 | 設計のはなし