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住まいとデザインのはなし 2002-2016

115 住まいの寿命(1)

115 住まいの寿命(1)_e0025025_1525735.jpgこれは「木工職人の家」の北面の外壁を写した写真です。
濃いグレーの外壁と対照的な新緑で覆われた山なみと五月晴れの空がとてもきれいです。

この外壁は上部をポリカーボネートの波板、下部をビニールカーテンで構成されていますが、どちらもホームセンターなどで販売され、入手しやすく安価な素材です。実はこの内側には、もう一層の外壁があり、こちらは針葉樹の合板で仕上られています。

どうして普段とは一風変わった仕上げを選択しているのかという謎解きは簡単です。
まずは住まい手が木工の職人さんで、表面仕上材(ポリカ波板など)の内側に木工作品に使用する木材の原板を立てかけて乾燥させるため、そしてその際に外壁を傷めやすいので比較的傷が付きにくく、仮に傷が付いても自分で補修しやすいように(しかも安価に)との配慮からでした。


日本の住宅の平均寿命はおよそ30年と言われています。これはアメリカの45年、イギリスの75年と比べ、圧倒的に短い数字です。ではなぜそんなに短いのでしょうか。
ひとつには、戦後の高度経済成長期に慌しく建てられた住宅の品質の低さが原因でしょう。現在の住宅はそこまで品質が低いとは言いませんが、社会全体が利益優先志向の体質から抜け出てないので、大幅に改善されたとは言えないのが現実です。
また日本人が長く消費を優先させ、使い捨て文化を助長してきたことにも原因があります。アメリカはDIYの好きな国柄ですし、イギリスは古いものを大切にする国柄です。つまりはメンテナンスを怠っていることが低寿命化に影響していると考えれれます。
少し前の話ですが、政府はこの低寿命住宅の文化にメスを入れんとばかりに「200年住宅構想」を掲げました。勿論、200年という耐用年数に科学的根拠は全くありません。

私たちの設計する住まいは「100年住宅」を目標に掲げています。この立証はあと何十年も経たないといけないので、これまた根拠がないように聞こえますが、私たちのとっている工法が長寿命の(100年以上たった)民家などを参考に造られたものであり、またそれらの短所を改良しているからこそ言えるのです。また使用されている木材は80年生以上のものが多く、エコサイクルを考える上でも、何としても80年以上は持たせなければいけないという思想の元に造られているからです。この「100年」という数字はあくまでも目標値ですから、住まい手の努力次第でそれ以上になることも十分可能ですし、それには冒頭に上げたようなメンテナンスを怠らないことが重要なのです。(A)
by miz-arch | 2007-11-27 19:28 | 住まいのはなし